長年変わらぬスタイルで営業を続ける飲食店。
国分寺市内にもそんなお店はたくさんありますが、味・雰囲気・接客すべてにおいて素晴らしいというのが、例外なく言えることではないでしょうか。
今回は、この3拍子が揃った、私自身もずっと大好きなお店を、満を持してご紹介しますね。

お店の名前は、izakaya SAPO。国分寺駅南口から徒歩8分ほど、府中方面に向かう国分寺街道沿いにあります。
青いテントとブラウンの路面タイルに、さりげないグリーンの植栽。視覚的にとても落ち着きます。
大きくセットバックしているので、街道からは外観がまったく見えず、隠れ家的な雰囲気をかもしだしていますね。

ただ、路上には「SAPO」と書かれた小さな看板が出ているので、こちらがちょっとした目印になっています。
30年以上の歴史が刻まれた、ゆとりと落ち着きの店内

SAPOさんは1994年5月開業、30年以上続いているバルスタイルのお店です。
入り口の扉と店名プレートに、その歴史がにじみ出ていますね。
ランダムなデザインの格子ガラスと、お魚をあしらった取手がついた扉も、ずっと変わらないままです。
izakayaとローマ字で書かれているのは、バルという言葉が開業当初は馴染みが薄かったので、ひと工夫してこのような表記にしたのだそうですよ。
気になる店内、早速入ってみましょう。

扉を開けると、L字カウンターとゆったりしたテーブル席が並んでいます。
「あ〜、いらっしゃい」。店主の田口さんは、いつもおだやかな微笑みで声をかけてくれます。
なんだか家に帰ってきたような、とても温かみのある雰囲気にめちゃくちゃ癒されます。
この明るくて家庭的な雰囲気は、30年もの間、ほとんど変わっていないと思います。それでいて、清潔感ある整った印象もあります。
レトロ感があるけど、古臭い感じがしない、不思議な空間ですね。

ゆったり配置されたテーブル席。椅子も含めて全部木製というのも、今となってはとても贅沢なインテリアではないでしょうか。
そして、BGMはいつも、これまたゆったりとしたボサノヴァ音楽。
何もかもがゆとりに満ちているのです。
安心・安定の絶品メニュー
席について、思わず幸せなため息がもれ出たところで、早速メニューを見ていきましょう。
紙のグランドメニューは、各テーブルごとにコップに丸めて挿してあります。

ドリンクは、たくさん種類がありますね。
意外なところでは焼酎もあります。スピリッツ系は、ざっくりとお酒の種類だけ書いてありますが、いろいろな銘柄のものを置いています。

キッチンの棚にはスピリッツ系のボトルがズラリと並んでいます。

フードのグランドメニューがこちらです。
必要にして十分、それでいてしっかりとバリエーション豊富。飲みながらつまみたい人も、食事メインにしたい人も、大満足のラインナップですね。

加えて、本日のオススメ、通称「黒板メニュー」。
通常、ピザ・パスタ1品づつと、カルパッチョとソテー料理、フリットが2〜3種類あります。
仕入れや季節の変化で、ゆるやかに変わっていく形です。
バラエティ豊かだけれど、ケレンみのない、誠実でわかりやすいメニューは、誰からも好かれる実力店のあかし。ちゃんとおいしければ、奇をてらったことをしなくてもその魅力は伝わるのです。
そして、お気づきでしょうか?実はすべてのフードメニューが驚異の1,000円以下!!
ドリンクは、グラス提供のものは500円以下。
そうなんです、SAPOは雰囲気だけではなく、価格までずっと変わっていないのです。
あらゆる素材が値上がりをし続けている中、良心的すぎて心配になります。
本当に、頭が下がります……。
必ずひと手間かけた、約束されたおいしさ
さて、至れり尽くせりのラインナップに感動しつつも、注文していきましょう!

ドリンク1杯目は、シードルにしました。アイルランド産の飲み切りボトルです。
このような、ちょっと珍しいドリンクがあるのは嬉しいものですね。

こちらはお通し、ゆで落花生かオリーブ、どちらかを選びます。
2人で違うものを頼めば、シェアすることもできますね♪
フード1品目は、黒板のフリットシリーズから砂肝を。シンプルながらも美しい盛り付けですね。

柔らかくて、アツアツで、クセになるおいしさ!
隠し味にほんの少しカレー粉が入っているそうです。どうりでクセになるはず(笑)。
砂肝のフリットは比較的いつもありますが、イカ・タコ、ワカサギなど海鮮系も登場します。
このフリットシリーズ、野菜系は、季節によってもいろいろと変わります。
夏の時期はゴーヤに新生姜、新玉ねぎなど。秋冬はキノコ、春先はウドが絶品です!

2品目も黒板から、小鯵のエスカベッシュです。いろどりもキレイで、とてもおいしそうな盛り付けですね〜。
もちろん、食べてもおいしいですよ。ほどよく酸味が効いて、鯵も玉ねぎも味シミシミ、頭ごと、全部いただいてしまいました!

続いては、グランドメニューのアボガドとタコのサラダ。カラフルで楽しい、人気メニューです!
この日もあちこちから「アボガドとタコの・・・」と注文する声が聞こえてきました。
ブロッコリーも入って、栄養満点、何度でも食べたくなりますよ♪

こちらもグランドメニューから、エリンギのアンチョビバター焼きです。
ふっくらこんがりのエリンギの下には、バゲットの薄切りが敷かれています。
テーブルに置かれただけで、バターのいい香りにうっとり!香りだけでお酒飲めます……(笑)。
アンチョビのナイスアシストで、エリンギが立派に料理の主役を張っています!
さて、フードにずっと集中してしまいましたが、ドリンクも2種類目をオーダーしました。
グラス以上にお得な、デキャンタの白ワインです。

ハウスワインですが、安っぽい感じはなく、上品でバランスの良い味わい。どんなお料理も受け止めてくれそうなスグレモノです。
SAPOさんは、フードもドリンクも、いつだって感動的な満足感があるのです。
では、いよいよメインのフードメニューいきます!

黒板メニューから、豚ロースのソテー 青唐のトマトソース、です。
メニュー名を見ただけで、おいしいのが分かるようなネーミング。
実物を見るとさらにテンション上がりますー!
青唐とバルサミコ酢で、トマトソースは爽やかな仕上がりになっていましたよ。
焼き上がったお肉は、丁寧に切り込みを入れて、一口大にカットしてくれているので、ナイフなしでパクッといただけてしまいます。
ノンストレスで味に集中、お肉のうまみを存分に味わうことができました!
最後に、シメに入ります。
パスタもとても美味しいので、かなり悩みましたが、おつまみにもなるピザを注文することに。

グランドメニューから、4種のチーズピッツァです。
いやあ〜、このこんがりした感じ、溶けたチーズが混ざり合っている様子、そして絶妙なサイズ感!
SAPOさんのピザは、本当においしくて、個人的には人生で食べたおいしいピザのTOP3に入ると思っています。
ピザ専門店、ということではないのに、なぜこんなにもおいしいのでしょう。
ぜひいろんな方に食べてみていただきたいです。
生地と具のバランスが完璧で、ここまであれこれと食べてきたにもかかわらず、最後までおいしく、胃もたれ知らずでフィニッシュできました!
胃袋をつかまれる料理の秘密
SAPOさんの料理は、何を食べてもおいしいし、ケレン味のない、それでいて何度でも食べたくなる不思議な魅力に満ちています。
一度食べたら絶対に好きになる、みんな胃袋をつかまれてると思います。
その秘密のひとつは、隠し味にあるようです。
先ほどご紹介したように、砂肝のフリットにはカレー粉がほんの少し入っていたり、お料理に使うさまざまなソースに隠し味として、ブロードというイタリア料理で使う野菜のお出汁を使っているのだそうです。
「何を食べてもおいしい!」と思ってしまう秘密は、こんなところにあったのですね。
和食以外のお料理で、お出汁のうまみの底力を再認識する形にもなりました。
30年間変わらないスタンス
SAPOさんには、とても幅広い層のお客さまが来ています。
昔からの顔なじみの人、家族連れ、若いカップル、大人数グループに、シニアまで。
常連さんも多いですが、初めて来る人・ごくたまに来る人、さまざまです。
そして、店主・田口さんと、スタッフ・池田さんは、お店に来るお客さまが、どんな人であろうと、まったく変わらない同じスタンスで接してくれます。
穏やかに、あたたかく。遠すぎず、近すぎず。いつも本当に心地よいです。
人によって接客態度が変わらないって、とても大切なことだと思いますね。
「お店、ずーっと変わらないな」と感じるのは、お店の見た目だけでなく、こうした接客のスタンスが変わらないことにも理由があるのかもしれません。
SAPOさんの、お店ができたいきさつをうかがいました。
店主・田口さんは、昭和の時代、この地にあったバーで働いていたそうです。お店が閉店・解体となった跡地に、オーナーさんが新たに集合住宅を建設。1階部分は店舗スペースとしてしつらえて、「ここで飲食店をやってみないか?」と打診をされたとのこと。
こうして、田口さんは元のバーでの経験も活かしながら、izakaya SAPOをスタートさせたというわけです。
「SAPO」とは、ポルトガル語でカエルという意味。田口さん、カエルがお好きだったみたいです。
2000年になってまもなく、スタッフに池田さんが加わり、以後現在の形になりました。
キャリア20年以上の池田さんと、田口さんとのあうんの呼吸で、お料理はでき上がっていき、お店がどんなに混み合っている時でも、タイミングよく提供されて来ます。
私はこのお店で、「お料理まだかな。ドリンク早くこないかな。」と思ったことが一度もありません。本当にすごいなと思います。
お店の見た目、料理にドリンク、そしてお店の人。
みな、「個性的・インスタ映え・食べたことない味・サプライズ感」といった派手な印象はなく、むしろ「普通」と言えば普通かもしれない。
でも、この何でもない普通をひたすらに丁寧に積み上げてきた、それがizakaya SAPOなのだと思います。気軽に真似することはできない、実は一番難しくて大変なことかもしれません。
だからこそ、ずっと変わらないという印象を与えてくれるお店の雰囲気や味は、貴重で魅力的です。
ちなみに、私がSAPOさんに初めて行ったのは30年近く前だったと思うのですが、田口さんも池田さんも見た目がほとんど変わっていません!奇跡です。 →個人の感想です(笑)。
色々な意味でずっと変わらないizakaya SAPOさん。
ぜひ一度足を運んでみてくださいね。

izakaya SAPO
住所:東京都国分寺市南町2-11-28 カサ・デ・ロード 1F
アクセス:JR中央線「国分寺駅」南口徒歩約8分
連絡先:042-323-4519
営業時間:17:30〜22:00 (日曜日:17:00〜21:00)
定休日:月曜日
駐車場:2台