豊かな湧き水に恵まれた国分寺市。
中でも「真姿の池湧水群」は、環境省選定名水百選のひとつにも選ばれている有名なスポットです。
そこに立っているほこら「真姿弁財天」で、12年ぶりにご神体のご開帳が行われると聞きました。ご開帳が行われるのは、12年に1度の巳年(みどし・へびどし)だけとのこと。今回は11月8日・9日の2日間のみです。
「これは見逃すわけにはいかない」と思い、訪ねてみることにしました。
訪問予定日は9日の日曜日。あいにく天気予報は雨でしたが、かえって空いていてよいかもしれません。

お鷹の道遊歩道沿いをたどっていくと
真姿弁財天までは、西国分寺駅から歩いて15分ほどかかります。
西国分寺駅の南口を出て国分寺市役所の近くを通り、武蔵国分寺楼門を過ぎると、お鷹の道遊歩道の入り口に着きました。

湧き水を集めて流れる小川に沿って歩きます。

マンリョウが赤い実をむすんでいました。

雨の日も風情があって良いものですね。



大人気で長い行列が

弁財天の近くまでたどり着いたら、雨だというのに驚くほど大勢の人でにぎわっていました。行列は長く続いており、先まで見通せません。
来ているのは年配の方々がやや多めでしたが、親子連れの方もおり、まさに老若男女が集まっていました。みんな12年に1度の機会をのがさないようにと、出かけてきたのですかね。
行列が横にひろがらないようにカラーコーンとバーがところどころに置かれ、雨ガッパを着た何人ものボランティアの方々が誘導に大忙し。
ボランティアの方どうしの会話を聞くと、晴れていた前日はもっと人出が多く、参拝するまで1時間半ほどかかったそうです。想像していた以上の大人気でした。
なお、これもボランティアの方の話が耳に入ったのですが、12年前のご開帳のときは、ここまで人は集まっていなかったそうです。
昔の姿をとどめる豊かな環境


この辺りは、ケヤキやコナラなどの雑木林が今も多く残されています。秋が深まり、木々の葉が色づき始めていました。
あちらこちらから、呼び合うように野鳥の声が飛びかっていました。


大きな土蔵に板塀。昔ながらの建物も残っています。

豊富な自然と昔ながらの風景。これからも引き継がれていって欲しいです。
湧水にかこまれた真姿弁財天

ならぶこと30分あまり。真姿弁財天が見えてきました。

真姿弁財天のほこらは、湧き水がつくる「真姿の池」のほとりに立っています。
真姿の池の名前は、ある伝説に由来します。
平安時代の半ばに絶世の美女といわれた玉造小町が不治の病に苦しみ、病気平癒の祈願のため国分寺を訪れ21日間参詣したところ、一人の童子が現れ小町を池に案内し、この池で身を清めるように言って、姿を消しました。小町がそのとおりにすると病は消え、元の美しい姿にもどったと伝えられています。

きれいな水で病気が治って美しい姿にもどる。とても神秘的ですね。
しかもまつられているのは、七福神のなかで唯一の女神で美人で知られる弁財天(弁天さま)です。また弁天さまは、財宝の神様でもあります。いろいろご利益がありそうですね。
ちなみに弁財天は水の神さまでもあり、川や海、池のほとりなど水に関係する場所にまつられることが多いそうです。
こちらの弁財天は、遅くとも江戸時代後期には地元住民にまつられており、病気からの回復や安産祈願など、地元の人たちの心のよりどころとされてきたそうです。
神主さんが常駐しているような大きな神社ではありませんが、いつもきれいに整備されており、地元の人たちに大切にされていることがわかります。
心をこめてお参りしました

ようやく順番がきました。

なお、ご神体の撮影はできません。

橋を渡って前に進みます。
近くにくると自然と背筋がのびて、おごそかな気持ちになりました。
お賽銭を入れて、手を合わせ心をこめてお参りしました。
参拝後に、改めてほこらの中を拝見しました。薄暗くてよくは見えませんでしたが、弁天様のご神体は小さく白い顔をされていました。
お守りとご朱印も

普段は社務所などがないためお守りやご朱印はありませんが、ご開帳の2日間に限り特別にいただけることになっていました。


地元の農家さんの庭にテントが設けられており、そこでいただくことができました。

ついでに農家さんが育てられた柿と、国分寺産のはちみつも購入しました。
地域住民が盛り上げたご開帳と真姿音楽祭
今回の真姿弁財天ご開帳に合わせて、なんと音楽イベントが企画されていました。
昔のご開帳のときには、村びとたちが手作りの舞台をもうけてお芝居を楽しんでいたという記録があるそうです。
12年前のご開帳ではご神体が公開されただけでしたが、今年は地域の人たちが先人にならって「この機に地域を盛り上げたい」としてイベントを企画。「真姿音楽祭」というコンサートを開くことになりました。
弁財天(弁天さま)は、七福神の絵などでは琵琶をもつ姿で描かれているように、音楽や芸能の神様でもあるそうです。それを考えると、音楽祭は真姿弁財天ご開帳にふさわしいイベントですね。
真姿音楽祭は本来は近くの「おたかの道湧水園」で開催される予定でしたが、雨天のため国分寺市役所の1階エントランスホールに会場を移して行われることに。
せっかくの機会なので私も見に行くことにしました。
真姿弁財天から国分寺市役所までは歩いて5分ほど。12時半の開演までにはまだ時間があったので、途中でご飯を食べたり寄り道したりしながら、会場に向かいました。

開演10分まえくらいに市役所に着くと、会場にはもう人だかりができていました。満席で立ち見もでるほどの大盛況です。
来賓のあいさつなどの後、最初に登場したのは「武蔵国分寺 本村囃子連」さん。地元の本村八幡神社を中心に、お祭りや盆踊りなど伝統を守り広めるために活躍されている方々です。
笛や太鼓、鉦(かね)の軽快な演奏がはじまると、獅子舞が登場。緩急をつけた伴奏に合わせ、右に左にうねるように激しく動きまわります。会場の雰囲気もどんどんヒートアップしてきました。
獅子舞の熱演が終わると、ひょっとこなどのお面をかぶった踊り手たちが登場。子どもの演者もいましたが、笛や太鼓に合わせて大人顔負けの踊りを見せてくれました。
観客もリズムに合わせて手拍子をおくり、大いに盛り上がりました。
本村囃子連のみなさん、日頃練習をかさねていたのでしょうね。すばらしいパフォーマンスでした。
残念ながら私は所用でここで会場を離れてしまったのですが、この後もロックバンドやシンガーソングライター、ウクライナご出身のオペラ歌手の方など国分寺にゆかりがあるアーティストたちの音楽が続きました。

今回のご開帳と真姿音楽祭を主催したのは、国分寺市民有志による「真姿弁財天GO!!開帳実行委員会」の方々です。
古くから行われてきた貴重な行事を守り伝えると同時に、新しい風も吹き込む。
そんな地域の力を感じたイベントでした。
真姿弁財天ご開帳
住所 : 東京都国分寺市西元町1-13-2
アクセス : JR中央線「西国分寺駅」から徒歩約15分
開催期間 : 2025年11月8日(土)- 11月9日(日)
開催時間 : 11月8日 10:30-16:00
11月9日 10:00-16:00

























