国分寺市は、歴史の宝庫。市内のあちこちに、史跡が眠っています。
今回紹介する国分寺薬師堂もその一つです。
ところで皆さんは、国分寺という地名の由来をご存じでしょうか。元々は、奈良時代に聖武天皇が国の平和を願って、諸国(今の都道府県のようなもの)に1つづつ国分寺というお寺を建てさせたことに始まります。
当時の武蔵国(むさしのくに。大体今の東京都と埼玉県を合わせた地域)では、今の国分寺市の西元町一帯が、建設場所に選ばれました。当時の大きなお寺と言えば、最先端の文化を発信する場所。今の大学や病院、福祉センターの役割も果たしていました。
国分寺は鎌倉時代の終わりごろ戦乱で焼失してしまったのですが、国分寺薬師堂はその後まもなく再建されました。現在の建物は、江戸時代に今の場所に建て替えられたものです。
そんな国分寺薬師堂を訪ねてみました。
入り口に立つ国分寺仁王門

境内に入ると、まず目に入るのが国分寺仁王門です。
門といっても、ちょっとした家くらいの大きさ。中に何か入っているのでしょうか。近づいてみましょう。
門の両側の格子の隙間から中をのぞいてみると、

すごい迫力の仁王様が立っていました。向かって右側の、口を開けているこの像は、阿形像(あぎょうぞう)です。激しい表情ですね。

向かって左側の口を閉じたこちらの像は、吽形像(うんぎょうぞう)です。静かな迫力が伝わってきます。
木立の中の静かな空間

この日は、よく晴れて暑い日でしたが、境内は木がいっぱいで涼しく感じます。私のほかにはお客さんもおらず、とても静かでした。

木漏れ日につつまれた石段をのぼります。
荘厳な国分寺薬師堂

こちらが「国分寺薬師堂」です。荘厳で美しい建物ですね。
お堂の中には、重要文化財の木造薬師如来坐像が安置されているそうです。毎年10月10日ごろにご開帳されているとのこと。機会があればぜひ見てみたいです。

立派な鐘もあります。大晦日には除夜の鐘を打つのでしょうね。聞いてみたいです。

暑い中、紫陽花が涼しげに咲いていました。

確かに、「武蔵国国分寺」と額に書かれていますね。


梁には彫刻が。すごく精巧に彫られています。怖いようなかわいいような。

建物を支える礎石です。一つひとつ違う天然石に乗っているのに、建物の水平が保たれているのですから、昔の人の技術はすごいですね。

裏の方にまわってみます。
四国八十八ヶ所巡り石仏群

お堂の裏には、たくさんの石の仏様がならんでいます。これは、四国八十八ヶ所をモデルに作られたものだそうです。
四国八十八ヶ所巡りというのは、いわゆる四国おへんろのことですね。四国にある八十八ヶ所の霊場を巡ることで、煩悩が消えて願いごとがかなうと言われています。
四国八十八ヶ所霊場には、1番から88番までの札所(お寺のこと)があり、それぞれの札所にお参りする際には御詠歌(ごえいか)という和歌をよむことになっているそうです。こちらの石仏群のひとつひとつの仏様には、札所の番号と御詠歌が刻まれています。
この石仏群がいつごろ作られたのか分かりませんが、新幹線や飛行機がある現代と違い、簡単には四国まで行ける時代ではなかったことでしょう。国分寺の石仏にお参りすることで、四国おへんろと同じ効果があると期待されていたのでしょうね。

石仏の大きさは大体40〜50センチくらいでしょうか。小さな仏様です。

後ろに歌が刻まれています。

それぞれの仏様は個性豊かで、見ていて飽きません。手がいっぱいある仏様は、千手観音でしょうか。いくつか似た像がありますが、それぞれ表情が異なります。

この、つえを持った仏様もいくつかありました。

こちらは不動明王でしょうか。恐ろしい姿で描かれることが多い仏様ですが、こちらの像はかわいらしいです。

すこし苔が生えて、神秘的な雰囲気があります。


以前にこちらのお寺に来たときは、裏の方には回りませんでした。その後、石仏群のことを知り、見ずに帰ってしまったことを残念に思っていましたが、今回改めて見に来ることができて良かったです。
昔の人が石の仏様に託した思いに触れたような気がしました。
こうした歴史の重みを感じられる場所が、日常生活の場の近くにあたりまえのようにたくさんあるのが、国分寺の魅力のひとつです。京都や奈良、鎌倉などにある有名な観光地ももちろん素晴らしいですが、地元国分寺にもステキなスポットがいっぱいあります。
特にこの国分寺薬師堂の近くには、国史跡や市重要有形文化財が集中しており、半日もあれば何ヶ所も回ることができます。普段は人も少なく、ゆっくり落ち着いて見られるのもよいところです。
「この建物がたてられたころの人々は、どんな暮らしをしていたのかな」などと想像してみるのも面白いですよ。
近くに行く機会があったら、ぜひ国分寺薬師堂に立ち寄ってみてください。
国分寺薬師堂
住所: 国分寺市西元町1-13-16(国分寺境内)
アクセス : JR中央線「国分寺駅」から徒歩約18分
西武国分寺線・多摩湖線「国分寺駅」から徒歩約18分
JR中央線・中央本線・武蔵野線「西国分寺駅」から徒歩約15分
TEL : 042-325-2211